活動方針

当協議会は、ドライブレコーダーを活用した交通事故や交通関係トラブルの予防、早期解決などを通じて、安全で安心な交通社会を実現するため、ドライブレコーダーの普及及び利活用を幅広く総合的に推進し、SDGs(持続可能な開発目標)に積極的に貢献しながら、多様性を尊重したグローバルな社会をつくることを目的としている。 また、国内外の大学や研究機関、政府関係省庁との連携を強化しながら、ドライブレコーダーに関するすべての事項について、日本の中枢となるべく仕組みづくりにも取り組んでいく。

近年、あおり運転等のルールやマナー違反に対する社会的な関心が高まるとともに、高齢運転者の見守りなどの点から、特にマイカー向け(コンシューマー向け)ドライブレコーダーの普及が急速に進んでいる。従来から普及が進んできたタクシー、トラック、バス等の業務用ドライブレコーダーのみならず、マイカー向けドライブレコーダーについても、運転状況を映像として残すことの重要性が社会的に認識されてきたといえる。

ドライブレコーダーの映像は、公正な事故処理等を効率的に進めるとともに、安全運転を促すことにより事故を予防することに役立っている。また、個別の事故の予防や処理の効率化に資するだけでなく、その映像情報やビッグデータは、社会全体としての交通事故の予防や交通安全の向上に寄与するともに、さらに今後期待される自動運転社会における新たな技術開発の基礎データや自動運転車事故のメカニズムの解明など、新たな役割も期待される。

こういった社会的な背景を受け、2022年度においては、ドライブレコーダー協議会の活動を広く世間に知っていただき、多様性に対する競争力の強化と持続的な成長につながる施策により、関連企業の業績アップや研究者の情報共有など、相互利益を踏まえ有益な相乗効果を醸成する機会と場の提供を推進する。さらに、ドライブレコーダーはこれまでにカメラ解像度や記録方式などに大きな進化を重ねてきたが、今後もその進化は留まることが無いと考えられる。例えば、通信機能を利用して交通事故時の緊急通報やクラウドでの情報の記録が始まりつつある。また利用方法としても、損害保険での事故状況確認やエンターテインメント的なことも拡大してきている。そこで、昨年度検討したロードマップを発展させる形で、ドライブレコーダーにかかわる新しい技術動向や将来展望を幅広く調査し、10年後あるいは将来こうなるというドライブレコーダーの将来像をまとめることとした。

そして、関係するADAS、通信型、AACNなど社会的にニーズとシーズが高まってきたシステム仕様のガイドライン等を引き続き定めるとともに、ガイドラインに基づいた市販ドライブレコーダーの製品テストの充実・公表により、ドライブレコーダーの基本的な性能、信頼性の向上等を促す施策を推進する。

また、損害保険会社を中心に、通信機能を備えたドライブレコーダーの普及が進んでいることから、ドライブレコーダーによる各種情報提供や事故自動通報など、テレマティクスや IoT サービスとしての活用についても検討を進める。さらに、社会全体で大量に記録される映像情報のビッグデータの交通安全への活用についても、技術面やプライバシーなどの側面からの研究調査を行い、ドライブレコーダーのさらなる有効活用が図られるよう目指していくこととする。

コロナ対策として、多人数の会合を避けるため、Web 会議を利用することが一般化している。当協議会においても、Web 会議により部会活動を再開するとともに、理事会、総会、運営委員会についても、当分の間、Web 会議システムにより運営していくこととしている。 

2022年活動計画

ガイドライン作成

 ガイドライン作成部会では、ドライブレコーダーの未来の技術・活用などについて、国内外における法整備に呼応したドライブレコーダーにかかわる標準化の提案と、ドライブレコーダーの安全性にかかわるモデル、シナリオ、妥当性検証、試験方法の提示することを目的とする。

 また、ドライブレコーダーに関連する機能については、救急ヘリ病院ネットワークの D-Call Net 研究会との連携、ドライブレコーダーを第2種 D-Call Net(後付け自動車事故自動通報システム)に適用する場合における仕様の取りまとめと公表を検討していく。

製品テスト

 2022 年度は新たに体制を整え、ガイドラインに基づいた、「製品テスト」の意義を考え直し、ドライブレコーダーに求められる姿を「製品テスト」という切り口で実施していく。 そのためには、ガイドライン作成部会と製品テスト部会における活動が一体となり、速やかに検討結果を公表できるよう取り組みを強化していく。

 当面続くと予想される新型コロナウイルス環境であっても、市場に流通する製品について、会員内外を問わず、製品に記載の内容と実機の性能についてガイドラインに基づいた実機のテストにより評価を行う。また、公平かつ効率的な評価ができるよう、テスト項目と方法の見直しと改善を行い、課題を明確にしていく。

技術・調査

 2021年度までのデータ活用部会は、映像と音声の優れた記録機能を活かした走行場面のデータにおいて、咄嗟の機転で安全運転を継続維持したドライバーの事故回避運転技能や運転情報処理術などの創意工夫術を発見することを重視して活動してきた。また、ADAS部会は2019年度に作成したADAS(高度運転支援システム:Advanced Driver Assistance System)ガイドラインのアップデートを行いつつ、将来の ADAS 機能付きドライブレコーダーとしての DMS(ドライバーモニタリングシステム)の可能性を探り、ADAS 機能付きドライブレコーダーのあり方を検討することを目的としてきた。 さらに、ロードマップ委員会では、ドライブレコーダー普及の背景となっている映像情報化社会と自動運転時代の到来を想定しながら、通信型ドライブレコーダーの伸展も見据えつつ、ドライブレコーダー関連製品の発展とドライブレコーダー協議会の活動について、ワーキンググループを設け、中期ロードマップを作成した。

 2022年度は、データ活用部会とADAS部会、ロードマップ委員会を統合し、10年後を見据えた新たな部会として「技術・調査部会」を発足することとした。主な実施事項としては、第一に現在のドライブレコーダーの市場活況把握と動向の変化調査による現状分析と将来予測の提言を行う。第二に将来技術として市場投入が活発化し普及展開が進む可能性が大きいと予測される、ADAS・データ通信・緊急通報などの新技術調査研究を行い報告する。また、ガイドライン作成部会と連携して、ガイドラインに含まれるべき技術的な側面から活動を支援する。第三としては、ヒヤリハットデータ(東京農工大学保有など)の情報を活用しながら、事故や重大ヒヤリの原因について統計的な解析を行い、ガイドライン策定やデータ活用方法の検討に資する。

大学連携準備

 2022年度で協議会の主たる事務所が小金井市に移転することになった。この場所は国立大学法人東京農工大学の敷地内にあり、大学院工学研究院スマートモビィティ研究拠点ドライブレコーダデータセンターのフロアの一部を賃借している。ドライブレコーダデータセンターでは20年近くドライブレコーダーの映像情報やセンサーデータを集積し解析を行い、日本の自動車安全技術の研究開発に広く利用されており、世界でも類を見ない研究用データベースとなっている。この場所に本協議会が事務所を置くことになったわけであるが、今までとは異なり、技術や知識が身近に存在し、協議会の抱える各種問題について何らかのご意見をいただきやすくなった。ドライブレコーダデータセンターと多くの意見交換を行い、ドライブレコーダーの将来に明るい方向性が示せることを願うばかりである。そうした願いを実現するために、どういった部分で協力しあい何を決めていけば良いのかなど、具体的な協力関係を築いて議論する必要があるため、協議会側の窓口として「大学連携準備部会」を設置することとした。

 具体的な取り組み内容の策定は現段階では不明確であるが、2022年度は下地を作り、早い時期から密接な情報交換を行いつつ、相互利益の関係を作り上げていく計画である。また、他大学・研究機関・関係省庁との連携強化を視野に入れながらドライブレコーダーに関する日本の中枢となるべく仕組みづくりに取り組む。

総務

 2022年度初頭に、当協議会の主たる事務所が小金井市に移転する。これに伴い、協議会運営を滞りなく実施するための総務チームを事務局内に設置し、体制強化や会員相互の情報共有、新規会員の増強を図るための効果的な施策実施のための核とする。また、遅滞のない効率的な事務局とするため、一般事務処理や各種補佐作業を担当する事務補佐員を採用する。

 さらに、現在、外部委託中の交通事故時ドライブレコーダー買替補償金制度の事務業務についても、制度運営の効率化を目指し、2022年度中に本総務チームで取り扱えるようにする。

広報

 ドライブレコーダーの普及が進むとともに、その映像は交通事故処理だけでなく、交通安全教育やエンターテインメントの素材として活用が広まりつつある。一方、デバイスとしてのドライブレコーダーは、カメラと通信機能を一体化し、AIを活用した情報処理も行える後付可能な自動車部品として、ADAS・高齢者見守り・緊急通報など、さまざまなシステムやサービスのキーデバイスとして注目されている。

  このような中、ドライブレコーダーに関するさまざまな情報を会員間で共有し、また交通安全の啓発とドライブレコーダーのさらなる普及、当協議会の知名度向上を目的として、広く社会への情報提供を進める。このため、昨年度リニューアルしたホームページを積極活用し、ネットを活用したPR業務を進めていきたい。

「ドラプリ 2022」開催

 昨年のドラプリ 2021は、自動車技術会映像情報活用部門委員会の公開委員会と共催で、東京農工大学スマートモビリティ研究拠点協賛により、オンライン形式により開催した。参加者は自動車技術者関係を含めて多岐にわたり登録者数 250 名強と盛況であった。また昨年は副題を「ドライブレコーダーのAIの発展の可能性を探る」として、広く技術の動向と活用の展望について情報交換を行った。

 今年度のドラプリ 2022 はこれまでの実績を踏まえ、昨年同様に自動車技術会映像情報活用部門委員会と東京農工大学スマートモビリティ研究拠点との協力体制により、よりオープンな情報交流の場としてオンライン形式で開催する。講演内容は、最新の技術動向と活用について、多くの会員や大学、企業、一般の方々が興味を持って参加いただける内容をドラプリ実行委員会を中心に企画する。

個人情報

 当会の活動に関し、個人情報保護法第 20 条の規定に定められた組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置について個人情報保護基本方針を作成し、ドライブレコーダー補償金制度、ドライブレコーダーデータの利用等における個人情報保護を行う。

補償金制度

 当協議会が運営する「交通事故時ドライブレコーダー買替補償金制度」とは、制度対象ドライブレコーダーを購入し、事前登録を行ったユーザーに対して、1年間、当該ドライブレコーダーを設置した車両でレッカー搬送を伴う交通事故にあった際に、ドライブレコーダーの再購入費用一律4万円の補償金を支払う制度である。同制度運営のための費用はドライブレコーダーメーカーが負担するため、ユーザーは負担なしで同制度を利用できる。このため、ドライブレコーダーの商品価値向上につながり、現在ドライブレコーダーメーカー各社が、この制度を活用している。同制度は、2016年の発足以来、東京海上日動火災保険株式会社を引き受け会社として、また事務業務は株式会社リムライン及び株式会社審調社へ業務委託を行い、運営してきた。2022年度は、業務委託を行ってきた事務業務を当協議会内で行えるよう体制整備を行い、運営の効率化を進める。これにより、各メーカーに負担いただいている費用を減額し、各メーカーがより参加しやすい制度に改善を行う予定である。

他機関との連携・協力

 ドライブレコーダーに関連する他機関・団体との連携・協力を積極的に行い、連携すべき各種機関・団体との情報交換の機会を計画的に設けてきたところである。今後は、損害保険関係団体、画像処理団体等との提携を図っていく。

 また、自動車技術会映像情報活用部門委員会主催のフォーラムなどにも協賛し、同フォーラム内で、法人会員メーカーのドライブレコーダー紹介を実施する。秋に開催予定の「ドラプリ 2022」においても、昨年同様、自動車技術会映像情報活用部門委員会と東京農工大学スマートモビリティ研究拠点との共催実施を検討する。