ドライブレコーダー推奨ガイドラインのADAS ガイドライン (簡易型及び発展型 ADAS 付加機能要件)解説編
2020.9.16制定
解説1:用語の定義
(1) ADAS とは
ADAS とは「 Advanced driver assistance systems 」の略称であり、日本語で「先進運転支援システム」と表記する。 広義の ADAS は、安全でより良い運転のために車両システムを自動化・適応・強化するために開発されたシステムで あり、 安全機能は、潜在的な問題を運転者に警告することにより、またはセーフガードを実施し、車両の制御を代行することにより、衝突や事故を回避するように設計されている ものを指す。
本ガイドラインにおいては、ADAS 機能のうち、後付けが可能なものを指す。
(2) 簡易型 ADAS 機能
ドライブレコーダー等の車載機器に付属、付加機能として開発されたものであり、保安
基準や JIS/ISO の基準に当てはまらないが、自動車の運転において運転者の認知・判断を支援する機能を持つものを指す。
(3) 車線逸脱警告 機能
車線とは、車道の通行を円滑に行えるように設置される帯状の部分を指す。
道路標示として道路上に表示された中央線、車線、車線境界線、路側帯であって 、 白線、黄色線等
を指す (道路構造令 昭和 45 年 10 月 29 日政令第 320 号 )、道路交通法 昭和 35 年 6
月 25 日法律第 105 号 第 2 条第 1 項第 7 号 。 車線逸脱警告機能 は、 当該区分 線を 、 方
向指示器等を出さず、運転者が意図しない逸脱を警告する 機能 を指す。
(4) 車間距離警告 機能
車間距離とは、 自車の直前を走行している車両との間隙を指す。 車間距離警告機能 は、
前方を走行している車両と衝突の危険性のある短い車間距離になる場合に警告すること
を指す。
(5) 発展型 ADAS 機能
ADAS機能を主たる機能とする車載機器 、 及びこの車載機器と連携して作動するドライ
ブレコーダー、ドライブレコーダー等の車載機器に 付属、付加機能として開発されたも
のであり、保安基準やのであり、保安基準やJIS/ISOJIS/ISOの基準の基準等に該当、準拠するもので等に該当、準拠するもので、自動車の運転におい、自動車の運転において運転者の認知・判断を支援する機能を持つものを指す。て運転者の認知・判断を支援する機能を持つものを指す。
6.1.2 車線逸脱警告機能車線逸脱警告機能
(1)車線を逸脱するおそれがあると車線逸脱警告機能が検知したときは、警告音によりユーザーに警告を行うものであること。ただし、走行速度が 60km/h 未満の場合は、車線逸脱を警告することを要しない。
(2) 車線逸脱警告機能の動作は、ユーザーの意志により ON/OFF が可能な構造とすることができる。
(3) 車線逸脱警告音は、車線逸脱警告機能の動作が ON のとき、同一製品の他の警告音と 明確に異なるものであること。
(4)車線逸脱警告表示器を備える場合は、車線逸脱警告機能の動作が ON のとき、車線を逸脱するおそれがあることを表示するよう推奨する。
解説2
① 簡易型 ADAS 機能 の車線逸脱警告 機能 については、付加機能としての側面も現時点
では大きい ため 、ユーザーの希望により機能を切ることを可能とした。
②警告音については、主となる機器の警告音と明確に異なることとして、ユーザーへの警告を行うこととした。
③表示機・ディスプレイがある場合には、車線逸脱の警告を表示でも運転者に知らせることとした。
④車線逸脱警告機能は、主に高速道や自動車専用道における居眠り等を防止する観点から、概ね走行速度が 60km/h 以上で動作することとした。これは市街地における駐車車両を避けることでの警告を不要としている。
⑤なお、保安基準の協定規則 130 号「車線逸脱警報装置」の基準では、運転者に提供する警報は「視覚、聴覚、触覚のうち少なくとも2つの警報手段」とされており推奨する。警報の速度も「概ね 60km/h を超える車両速度において機能する」となっており、簡易型においても動作速度について明記した。
6.1.3 車間距離警告機能
(1)危険な車間距離であると車間距離警告機能が検知したときは、警告音によりユーザーに警告を行うものであること。ただし、走行速度が 40km/h 未満の場合は、車間距離を警告することを要しない。
(2)車間距離警告機能の動作は、ユーザーの意志により ON/OFF が可能な構造とすることができる。
(3)車間距離警告音は、車間距離警告機能の動作が ON のとき、同一製品の他の警告音と明確に異なるものであること
(4)車間距離警告表示器を備える場合には、車間距離警告機能の動作が ON のとき、危険な車間距離であることを表示するよう推奨する。
解説3
①簡易型 ADAS 機能の車間距離警告については、付加機能としての側面も現時点では大きいため、ユーザーの希望により機能を切ることを可能とした。
②警告音については、主となる機器の警告音と明確に異なることとして、ユーザーへの警告を行うこととした。
③表示機・ディスプレイがある場合には、車間距離の警告を表示でも運転者に知らせることを推奨するとした。
④車間距離警告は、輻輳した市街地での走行の際に警告が鳴りすぎることを防止する観点から、概ね走行速度が 40km/h 以上で動作することとした。
6.1.4 簡易型 ADAS 機能の必須表記要件
6.1.4.1車線逸脱警告機能について、動作条件及び具体的な警告方法を記載したものであること。特に、動作速度範囲については、明確に記載すること。
6.1.4.2車間距離警告機能について、動作条件及び具体的な警告方法を記載したものであること。特に、動作速度範囲については、明確に記載すること
解説4
①車線逸脱及び車間警報は、利用するユーザーに誤解や性能過信を与えないために「動作条件、警告方法、動作速度範囲」の 3 項目は明確に表記することとした。
②具体的には取扱説明書、簡易取扱説明書(リファレンスガイド等)、商品カタログ及び商品紹介 Web 等でユーザーに周知することを想定している。
③表記例
A. 動作条件:昼夜走行中(ただし、夜間で街灯等がない等では作動しない場合がある。)
B.車線逸脱の警告方法:ディスプレイに「車線逸脱又は LDW の表示」警告音は単音の繰り返し「ピロピロピロ…」又は「車線をはみ出しています、ご注意ください」の音声警告
C.車間距離の警告方法:ディスプレイに「『車間が近すぎます』表示」、警告音は単音警告「ピーン」又は「前方にご注意ください」の音声警告
6.2 発展型 ADAS 機能
6.2.1 発展型 ADAS 機能は、次の要件を満たすものであること。
(1)発展型ADAS機能は、車線逸脱警告機能及び車間距離警告機能を有するものであること。なお、必要に応じ、衝突警報機能を有するものとすることができる。
(2)発展型 ADAS 機能は、車速を常時利用するものであること。
(3)車両情報の設定が必要な場合には、確実に設定を完了していることが確認できる手段を有するものであること。
解説5
①発展型では、様々な計算が車速をベースとして行われるケースが多いため、車速信号は常時利用することとした。また、コンマ 1 秒以下の速度変化を見るために GPS による車速は推奨しない。GPS による車速を利用する場合は簡易型となる。
②発展型では、車両ごとにキャリブレーション作業が必要なケースが多いため、単に取り付けただけでは正確に動作しないので、ユーザー側が正常動作を確認できる方法が必要であることとした。
③確認の方法については、正常動作の取扱説明書等のドキュメントでの通知やコーションマークを想定している
6.2.2 車線逸脱警告機能
(1)車線逸脱警告機能は、車線に対して車両の前輪外側が約 20cm 以内に近付いたときに警告音によりユーザーに警告を行うものであること。
(2)車線逸脱警告機能の動作は、常に動作可能な状態であること。
(3)(1)及び(2)の規定にかかわらず、次の場合は、車線逸脱を警告することを要しない。走行速度が 60km/h 未満の場合ウインカー操作がされた場合 天候や路面状況により車線の認識が困難な場合
解説 6
①車線逸脱警告の動作は、常に動作状態であることとした。「常に動作状況にある」という状態は「システムを OFF することが不可能なこと」、「システムを OFF にした場合には、次の再始動時には自動的に復帰すること」等を指し、ユーザーが常時 OFF にできない構造とした。
②車線逸脱警告の基準については道路運送車両の保安基準の細目を定める告示に定める協定規則 130 号「車線逸脱警報装置」の技術的な要件の規定及び TRIAS 43(6)-R130-011 に準拠しているが、これは現時点では必須ではなく、本ガイドラインへの適合をベースとして、協定規則 130 号に適合している製品はそのまま適合しているとみなされる。また、協定規則 130 号に適合した機器と同一の作動をすると製造者が証明・説明するものも含まれる。
③警告音、表示については、解説項目として以下を推奨する
A.単音の断続(例:ルルルル・・・)
B.音声による警告(例:右<左>車線にご注意ください。)
C.表示については、協定規則 130 号に準拠して「車線マーク」が望ましい。
④車線逸脱の警報時期に関しては、各国の後付け車線逸脱警告から「車線に対して車両の前輪外側が約 20cm 以内に近づいたときに警告音によりユーザーに警告を行うこと。」としたが、協定規則 130 号に適合、準拠する場合はこの限りではない。
⑤天候状況や路面状況により車線逸脱警告が不可能な場合には警告することを要していない。これは昼夜間の照度差を指すのではなく、「豪雨、降雪」、「降雪による路面標示が見えない場合」等や「車線が二重白線等で、踏まなければ走行できない場合」に解除されることを許容するものである。
⑥ウインカー操作がある場合の例外は、「ウインカーを操作して運転者が意図して車線逸脱=車線変更=進路変更する場合」を想定し、ウインカー・方向指示器が動作している場合には警報しないこととした。
6.2.3 車間距離警告機能
(1)危険な車間距離であると車間距離警告機能が検知したときは、警告音によりユーザーに警告を行うものであること。ただし、走行速度が 40km/h 未満の場合は、車間距離を警告することを要しない。
(2)車間距離警告機能の動作は、常に動作可能な状態であること。
(3)車間距離警告音は、同一製品の他の警告音と明確に異なるものであること。
(4)車間距離警告表示器を備える場合には、危険な車間距離であることを表示すること。
解説7
①車間距離警告についても、常時動作の規定は車線逸脱警告・解説6の①と同様である。
②警告音、表示については、解説項目として以下を推奨する
A.単音(例:ピーン・・・)または衝突警報とは別の断続音
B.音声による警告(例:前方にご注意ください。)
C.表示については、車間が詰まった状況を示すアイコン(例:赤色表示)等が望ましい
6.2.4 衝突警報機能
(1)衝突警報を有する場合には、JIS D0802-2015「高度道路交通システム-前方車両衝突警報システム-性能要求事項及び試験方法」・ISO15623-2013 ”Intelligent transport systems – Forward vehicle collision warning systems – Performance requirements and test procedures” に準ずるものであること。
解説 8
①追突を回避するための衝突警報は JISD0802-2015/ISO15623-2013「高度道路交通システム―前方車両衝突警報システム−性能要求事項及び試験方法」に性能要求事項及び試験方法が規定されており、これに準ずることとした。
②「準ずる」とは、
A.当該機器が JISD0802-2015/ISO15623-2013 のテストリポートを取得すること。
B.若しくは A のテストリポートを取得している機器、もしくは車両をベンチマークとして試験をし、その大半が同一の結果が得られたことを製造者・販売者が証明できること。
③上記を満たさないものは、当面の間、ADAS 簡易版として取り扱うことを可能としている。
6.2.5 発展型 ADAS 機能の必須表記要件
6.2.5.1車線逸脱警告機能について、動作条件及び具体的な警告方法を記載したものであること。特に、動作速度範囲については、明確に表記すること
6.2.5.2距離警告機能について、動作条件及び具体的な警告方法を記載したものであること。特に動作速度範囲については、明確に表記すること。
解説9
①車線逸脱及び車間警報は、利用するユーザーに誤解や性能過信を与えないために「動作条件、警告方法、動作速度範囲」の 3 項目は明確に表記することとした。
②具体的には取扱説明書、簡易取扱説明書(リファレンスガイド等)、商品カタログ及び商品紹介 Web 等でユーザーに周知することを想定している。
③表記例
A.動作条件:昼夜走行中(ただし、夜間で街灯等がない等では作動しない場合がある。)
B.車線逸脱の警告方法:ディスプレイに「車線逸脱又は LDW の表示」警告音は単音の繰り返し「ピロピロピロ…」又は「車線をはみ出しています、ご注意ください」の音声警告
C.車間距離の警告方法:ディスプレイに「『車間が近すぎます』表示」、警告音は単音警告「ピーン」又は「前方にご注意ください」の音声警告
6.2.6 外部機器接続要件
6.2.6.1発展型 ADAS 機能を持つ外部機器との接続により、内蔵機能と同等の機能を実現する場合には、以下の要件を満たすものであること。
6.2.6.1.1 接続方法
(1)ドライブレコーダー側には、外部機器との接続ポートを設けること。
6.2.6.1.2 接続の堅牢性
(1)接続口は、容易に外すことができないコネクター方式が望ましい。
6.2.6.1.3 入出力データ仕様
(1)入出力データ仕様は、以下の通りとする。
(2)アナログ信号:アナログ信号によるトリガー
(3)CAN 信号:ISO11898 ハイスピード CAN 又は ISO11519 ロースピード CAN
6.2.6.1.4 警告音及び画面表示
(1)車線逸脱警告機能については、6.2.2(3)及び(4)に準ずるものであること。
(2)車間距離警告機能については、6.2.3(3)及び(4)に準ずるものであること。
6.2.6.1.5 表示要件
(1) 6.2.5 に準ずるものであること。
解説 10
①外部機器接続は、発展型 ADAS として単体の ADAS 機能をもつ車載機器と、ドライブレコーダー及びドライブレコーダーやデジタル式運行記録計又はそれらを複合した機器と接続し、警告に必要な車速情報の提供や、警告をベースとした映像トリガーとして活用を想定している。また将来に ADAS に係る本規定にないセンサーや、EDR(イベントデータレコーダー)がドライブレコーダーの連携装置として登場した場合にも、「システムとして一体製品とする」可能性を想定している。
②接続方法、接続の堅牢性については、分岐可能なコネクターが望ましいが、一方で接続側のドラレコ等の機器側にコスト面で負担を与える可能性が高く、基板側の整備と専用コネクターの準備及び開発コストを極力避けるために、「接続ポートを設け、堅牢性があること」に限った。
③これは、接続ポートをコネクター方式にすることを否定するものではなく、様々なコスト面を考慮した接続方式を残すものである。一方、接続方式にあえて無線接続方式(Bluetooth®等)も否定はしていないが、無線接続方式には、近距離無線通信規格として複数の方式があることや、端末の急激な増加による電波干渉でのペアリングが解除され、再接続しない問題などもあり敢えて推奨とはしていない。
④ローコストな接続ポートとしては、「基板上に接続穴を設け、ねじ止めする」等、低コストかつ、堅牢性の担保される方式を想定している。
⑤入出力データ仕様については、現段階ではアナログ信号によりトリガーとするケースが多く、これにより簡素な回路で容易に発展型 ADAS 機器を活用できる可能性が高いため、このような表記にしている。CAN 信号については、将来にわたり車両情報のやり取りがされる場合に、後付け製品として車両側の信号を活用できる可能性があることや、既に CAN 信号を利用している後付け機器として発展型 ADAS やデジタコ・ドラレコ一体機器があり、このことから車両側で規格化されている CAN 信号の規格とした。
⑥警告音、画面表示、表記に関しては発展型 ADAS と同一としたが、接続される車載機器側の表示に逆に警告を表示するケースも想定されるため、あえて記載をしている。後付け車載機器も android Auto(自動車向けアンドロイド OS)や Apple CarPlay(自動車向け連携 OS)等の規格に準じていくことも技術動向としてはあり、一方で車載機器側が多彩な表示をダッシュボード上等に設置される「マルチディスプレイ」、「ヘッドアップディスプレイ」、「貼付式タッチパネル」等が登場する可能性も高く、これらの汎用ディスプレイ上に警告表示をする場合も、システムとして一体化することを想定している。
以上